
スプリンクラー設備は、火災による熱や感知器からの信号などによって作動し、自動的に散水して初期消火や延焼の抑制を行う消防用設備のひとつです。火災が小さい段階で作動することで、被害の拡大を抑え、建物内にいる人が避難するための時間を確保します。
ただし、スプリンクラー設備は、すべての建物に一律に設置が義務づけられているわけではありません。消防法第17条第1項に基づき、消防法施行令第12条では、建物の用途・階数・床面積などに応じて、スプリンクラー設備を設置しなければならない防火対象物や部分が定められています。
なかでも、不特定多数の人が利用する施設や、火災時に自力での避難が難しい方が利用する施設などには、建物の用途や規模に応じた設置基準が設けられています。また、設置位置や機器の仕様についても、消防法施行規則や関連する告示、自治体の火災予防条例などを確認する必要があります。
スプリンクラー設備には、閉鎖型・開放型・放水型など複数の種類があるため、建物の用途や使用環境に適した設備を選定することも重要です。
この記事では、スプリンクラー設備の仕組みや種類、作動条件、設置基準などについて詳しく解説します。
スプリンクラー設備とは?
スプリンクラー設備とは、火災による熱、または火災感知器からの信号などによって作動し、水を散布して初期消火や延焼抑制を行う消防用設備です。建物の天井や壁などに設置され、火災による被害の拡大を抑えるとともに、安全に避難するための時間を確保する重要な役割を果たします。
ここでは、スプリンクラー設備の重要性や仕組み、作動条件、種類について解説します。
スプリンクラー設備の重要性
スプリンクラー設備が重要とされる主な理由は、以下になります。
- 高い初期消火能力
火災が拡大する前の初期段階で自動的に散水を開始するため、高い初期消火能力を発揮します。
総務省消防庁の資料では、平成14年から平成23年までの火災データをもとに、スプリンクラーが法令に基づき設置された建物では、死者の発生率が約6分の1程度に抑えられているとされています。 - 避難時間の確保と被害の軽減
火災の拡大を抑えることで、有毒な煙や一酸化炭素による被害の軽減にもつながります。
これにより、安全に避難するための時間を確保しやすくなり、火災による人的被害の軽減が期待できます。 - 人がいない場所でも自動で作動する
福祉施設や大規模商業施設など、夜間や人員が限られている環境でも、人の操作を必要とせず火災の初期段階に対応できます。
スプリンクラー設備の仕組みと作動条件
ここでは、一般的に広く使用されている「閉鎖型湿式スプリンクラー設備」を例に、基本的な構造と作動の流れを解説します。
スプリンクラー設備は、主に以下の機器や装置で構成されています。
- 水源
放水するための水を貯めておくタンクや水槽 - 加圧送水装置(消火ポンプ)
水源の水を必要な圧力で配管へ送り出す装置 - 流水検知装置
配管内の水の流れを検知し、警報の発信やポンプの起動などにつなげる装置 - スプリンクラーヘッド
天井などに設置され、火災による熱を感知し自動的に消火水を散水するノズル - 送水口:火災時に消防隊が外部から消火用水を送り込むための接続口
- 補助散水栓
スプリンクラーヘッドを設けない部分などを補完するため、利用者が操作して消火に使用する放水器具 - 配管
火災時に水源から送られる消火用水を、天井などに設置されたスプリンクラーヘッドまで安全かつ確実に運ぶための管路 - 非常電源
火災による停電時でも消火ポンプなどの設備が停止しないよう、電力供給をバックアップする専用の電源

作動条件

一般的な閉鎖型スプリンクラー設備は、主に火災による「熱」によって作動します。
火災による熱でスプリンクラーヘッドの感熱体(かんねつたい)が一定の温度に達すると、放水口が開き、自動的に放水が開始される仕組みになります。
感熱体とは、スプリンクラーヘッドの先端部分に取り付けられた、熱を感知して放水口を開放するための部品です。
設置される場所の環境温度に合わせて、感熱体には主に以下の3つの作動温度が設定されています。
- 72℃:オフィス・マンション・病院・商業施設などの一般的な建物
- 96℃:火気を使用する飲食店の厨房など、一時的に高温になりやすい場所
- 139℃:サウナなどの常時高温状態になる場所
スプリンクラー設備の種類
スプリンクラー設備は、ヘッドの作動方式や水の放出方法により、「閉鎖型」「開放型」「放水型」の3種類に大きく分けられます。
設置場所の用途や環境に応じて、適切な種類を選定する必要があります。
ここでは、それぞれの特徴について解説します。

閉鎖型スプリンクラー設備
閉鎖型スプリンクラー設備は、火災による熱を感知すると、自動的に散水して初期消火を行う設備です。
通常はヘッドの放水口が閉じていますが、火災による熱で一定の温度に達すると感熱部が作動し、自動的に放水を開始します。
閉鎖型スプリンクラー設備は、さらに以下の3種類に分けられます。
- 湿式(しっしき)スプリンクラー設備
- 乾式(かんしき)スプリンクラー設備
- 予作動式(よさどうしき)スプリンクラー設備
湿式(しっしき)スプリンクラー設備
閉鎖型湿式スプリンクラー設備は、配管内が常に加圧水で満たされている一般的な方式です。
火災の熱でヘッドが開放されると、すぐに放水を開始します。オフィス、共同住宅、病院、商業施設など、凍結のおそれが少ない一般的な屋内で広く用いられています。
- メリット:配管内に加圧水が満たされているため、ヘッドが作動するとすぐに放水できます。構成が比較的シンプルで、一般的な建物に広く採用されています。
- デメリット:低温環境では配管内の水が凍結するおそれがあります。また、ヘッドや配管が破損すると水が流出し、室内や設備に水損が生じる可能性があります。

※画像をタップすると拡大されます
乾式(かんしき)スプリンクラー設備
乾式スプリンクラー設備は、配管内の水が凍結するおそれのある寒冷地や屋外の軒下などに設置されることが多く、通常は配管内に水ではなく「加圧空気」を充填しておく方式です。
通常時は二次側配管内に水がないため、湿式に比べて凍結による配管損傷のリスクを抑えやすい方式になります。火災の熱でヘッドが開放されると、まず空気が抜け、その後から水が送られる仕組みになっています。
- メリット:通常時は二次側配管内に水がないため、凍結しやすい寒冷地、冷凍倉庫、屋外に近い場所などにも採用できます。
- デメリット:配管内の空気を排出してから水が届くため、湿式に比べて放水開始までに時間がかかります。空気圧縮機などの付帯機器を含めた点検・維持管理も必要です。

※画像をタップすると拡大されます
予作動式(よさどうしき)スプリンクラー設備
予作動式は、火災感知器による火災信号とスプリンクラーヘッドの作動を組み合わせて放水する方式です。一般的な湿式よりも誤放水による水損を抑えやすいため、通信機器や美術品など、水に弱い物品を扱う場所に適しています。
そのため、通信機器室、電算室、美術館など、水損による被害を抑えたい場所で採用されています。
- メリット:感知器とヘッドの作動を組み合わせるため、ヘッドの破損や誤作動だけで大量に放水するリスクを抑えられます。
- デメリット:感知器、予作動弁、制御装置などを組み合わせるため、設備構成が複雑になり、導入費用や点検・維持管理の負担が大きくなる傾向があります。

※画像をタップすると拡大されます
さらに、予作動式閉鎖型スプリンクラーは配管によって主に以下の2種類に分かれます。
- 予作動式湿式スプリンクラー設備
二次側配管内を加圧水で満たし、火災感知器の信号とヘッドの作動を組み合わせる方式です。放水開始が比較的速い一方、ヘッドや配管が破損した場合は、二次側配管内の水が一定量流出する可能性があります。 - 予作動式乾式スプリンクラー設備
二次側配管内を圧縮空気で満たし、火災感知器の信号で予作動弁が開いた後、ヘッドが作動すると放水する方式です。水損リスクをより低く抑えられる一方、放水までに時間を要し、設備構成も複雑になります。
作動したスプリンクラーの放水は自動で止まる?

湿式・乾式のいずれも、一度開放したスプリンクラーヘッドは、火が消えたり周囲の温度が下がったりしても自動では閉じません。給水が続く限り、作動したヘッドからの放水は継続します。
そのため、水源の有効水量が尽きれば最終的に放水できなくなりますが、通常は鎮火を確認した消防隊や防火管理者、消防設備の有資格者などが制御弁を閉止し、ポンプを停止して放水を止めます。
火災中や鎮火が確認できない状態で、居住者や施設利用者が自己判断でバルブを閉めてはいけません。
まず119番通報し、建物管理者や消防設備業者へ連絡してください。
なお、閉鎖型では熱を受けたヘッドだけが作動し、通常はすべてのヘッドが一斉に放水するわけではありませんのでご注意ください。
開放型スプリンクラー設備
開放型スプリンクラー設備は、感熱部を持たない開放型のヘッドを使用する設備です。
火災の熱で個別に作動する一般的な閉鎖型とは異なり、火災感知器の信号や手動操作に連動して一斉開放弁が開き、防護区域全体へ一斉に放水します。
天井が高い場所や可燃物が多い場所など、火災が急速に拡大するおそれのある劇場・化学工場・倉庫などで用いられます。

※画像をタップすると拡大されます
放水型スプリンクラー設備
放水型スプリンクラー設備は、火災感知器の信号を受けて制御部が作動し、離れた場所から広範囲に水を放水する消火設備です。
主に床から天井まで10mを超えるドーム、アトリウム、展示場など、一般的な閉鎖型スプリンクラー設備では十分な効果を得にくい高天井・大空間に設置されます。
火災感知器や制御装置などを組み合わせ、施設の条件に合わせて設計します。

※画像をタップすると拡大されます
スプリンクラー設備の種類別比較表
ここまで紹介した主な方式の違いをまとめると、以下のようになります。建物の用途、温度環境、水損リスク、天井の高さなどを踏まえてしっかりと選定し設置する必要があります。
| 種類 | 通常時の配管・ヘッド | 主な作動条件 | メリット | デメリット・主な用途 |
| 閉鎖型・湿式 | 配管内は加圧水/閉鎖型ヘッド | 火災の熱でヘッドが開放 | 放水開始が速く、構成が比較的シンプル | 凍結・破損時の水損に注意/一般的な建物 |
| 閉鎖型・乾式 | 二次側配管内は圧縮空気/閉鎖型ヘッド | ヘッド開放→空気排出→弁作動→送水 | 凍結のおそれがある場所に対応 | 放水までに時間を要し、維持管理項目が増える/寒冷地・冷凍倉庫など |
| 予作動式湿式 | 二次側配管内は加圧水/閉鎖型ヘッド | 感知器の信号+ヘッドの作動 | 通常の湿式より誤放水を抑えやすく、放水も比較的速い | 破損時に配管内の水が流出する可能性/電算室など |
| 予作動式乾式 | 二次側配管内は圧縮空気/閉鎖型ヘッド | 感知器の信号+ヘッドの作動後に送水 | 水損リスクをより低く抑えやすい | 放水の遅れ、設備の複雑化、費用増/サーバー室・美術館など |
| 開放型 | 開放型ヘッド/一斉開放弁以降は通常水なし | 感知器の信号または手動操作 | 防護区域へ一斉に放水し、急速な延焼に対応 | 使用水量や水損が大きい/劇場の舞台部・工場・倉庫など |
| 放水型 | 固定式または可動式の放水ヘッド | 感知器の信号を受け、制御装置・弁が作動 | 高天井・大空間を広範囲に防護 | 個別設計が必要で構成が複雑/アトリウム・ドーム・展示場など |
※実際に必要となる設備や方式は、建物の用途・規模・構造、収容物、所轄消防署との協議などにより異なります。新設・改修の際は、消防設備士などの専門家へご相談ください。
スプリンクラー設備の設置基準
消防法では、学校・病院・工場・百貨店・旅館・飲食店など、政令で定める防火対象物の関係者に対し、建物の用途や規模などに応じた消防用設備等の設置・維持を義務づけています。
消防法第17条第1項には、次のように定められています。
政令で定める技術上の基準に従つて、消防用設備等を設置し、及び維持しなければならない。
引用元:e-Gov法令検索「消防法」第17条第1項

ここでいう「関係者」は、建物の所有者や管理者、そして実際にその建物を使用している人のことを指します。
消防法第17条では、こうした建物の関係者に対して、必要な消防用設備等を正しく設置し、火災時に常に使用できる状態を保つこと、そして設備を設置するだけでなく、定期的な点検や整備を行い、正常に作動する状態を維持することが求められています。
ただ、消防法第17条を読んだだけでは、どのような建物にスプリンクラー設備が必要なのかまで判断できないため、スプリンクラー設備の設置が必要な建物や場所について、より具体的に定めている「消防法施行令第12条」を詳しく読むことで正確にスプリンクラーの設置基準を理解することができます。
消防法施行令第12条を読み、建物の用途・階数・床面積・建物内の位置などをもとに、スプリンクラー設備が必要かどうかを判断します。
たとえば、建物の広さが同じでも、事務所として使用する場合と、病院や福祉施設として使用する場合とでは、設置基準が異なることがあります。また、建物全体の延べ面積だけでなく、どの階をどのような用途で使用しているのかによっても設置の判断が変わります。
このように、スプリンクラー設備の設置義務は、一つの条件だけで決まるものではありません。
スプリンクラー設備の設置義務は、主に次の条件を組み合わせて判断します。
- 用途・施設区分と床面積
ホテル、物品販売店、飲食店、劇場などは、用途ごとに、建物全体の延べ面積と、地階・無窓階・4~10階など各階または部分の床面積による基準が定められています。単一の面積基準だけでは判定できません。
病院や社会福祉施設では、火災時に自力避難が困難な方の利用状況などにより、延べ面積にかかわらず対象となる区分があります。 - 階数
消防法施行令第12条第1項第12号により、用途を問わず、原則として11階以上の階は設置対象です。ただし、共同住宅などには一定の特例・免除規定があります。 - 地下街・地階・無窓階(むそうかい)
延べ面積1,000㎡以上の地下街は設置対象です。また、建物の地階や無窓階は、用途ごとの基準において地上階より小さい床面積から対象となる場合があります。 - 建物の構造・設備と例外規定
同じ用途・規模でも、耐火区画など一定の構造要件を満たす場合や、共同住宅の特例などにより、設置範囲や必要な設備が変わることがあります。
消防法施行令 (スプリンクラー設備に関する基準)
第十二条 スプリンクラー設備は、次に掲げる防火対象物又はその部分に設置するものとする。
一 次に掲げる防火対象物(第三号及び第四号に掲げるものを除く。)で、火災発生時の延焼を抑制する機能を備える構造として総務省令で定める構造を有するもの以外のもの
イ 別表第一(六)項イ(1)及び(2)に掲げる防火対象物
ロ 別表第一(六)項ロ(1)及び(3)に掲げる防火対象物 ハ 別表第一(六)項ロ(2)、(4)及び(5)に掲げる防火対象物(介助がなければ避難できない者として総務省令で定める者を主として入所させるもの以外のものにあつては、延べ面積が二百七十五平方メートル以上のものに限る。)
このように、設置基準は、建物の用途、階数、延べ面積、各階・部分の床面積、構造などの組み合わせで決まります。
主な基準を整理すると、次のようにまとめられます。
| 主な建物・部分 | 代表的な設置基準 | 確認すべきポイント | 主な根拠 |
| 11階以上の階 | 用途を問わず、原則として11階以上の階に設置が必要です。 | 共同住宅などには特例や免除規定があるため、建物ごとの確認が必要です。 | 消防法施行令第12条第1項第12号 |
| 病院・有床診療所・有床助産所 | 火災時の避難が困難な患者が入院する施設のうち、政令で定める区分は、原則として延べ面積にかかわらず対象です。その他の病院等は、用途・階・床面積による基準があります。 | 診療科目、病床の種別、夜間の勤務体制、建物の構造などで対象・例外が異なります。 | 同条第1項第1号イ、別表第1(6)項イ |
| 高齢者・障害者等の社会福祉施設 | 自力避難が困難な方を主として入所させる施設など、政令で定める区分は、原則として延べ面積にかかわらず対象です。区分によっては275㎡以上が基準となります。 | 施設名だけでなく、提供するサービス、宿泊・入所の有無、利用者の状況、構造上の例外を確認します。 | 同条第1項第1号ロ・ハ、別表第1(6)項ロ |
| ホテル・旅館、物品販売店、飲食店、劇場等 | 用途に加え、建物全体の延べ面積と、地階・無窓階・4~10階など各階または部分の床面積で基準が異なります。 | 複合用途では、建物全体と各テナント部分の用途を併せて判定します。 | 同条第1項第2号~第8号等 |
| 地下街 | 延べ面積1,000㎡以上は設置対象です。 | 地下街と、建物の地階・無窓階では法令上の区分が異なります。 | 同条第1項第5号 |
| ラック式倉庫 | 天井の高さが10mを超え、かつ、延べ面積700㎡以上のものが対象です。 | 一般の倉庫すべてに一律適用される基準ではなく、ラック式倉庫への基準です。 | 同条第1項第5号 |
| 劇場等の舞台部 | 地階・無窓階・4階以上では床面積300㎡以上、その他の階では床面積500㎡以上の舞台部が対象です。 | 客席を含む建物全体の基準とは別に、舞台部の床面積で判定します。 | 同条第1項第2号 |
上表は代表的な基準の概要をわかりやすくまとめた表になります。通常は、消防法令だけでなく、各自治体の火災予防条例により設置基準が付加される場合があります。また、テナントの入替え、用途変更、増築・改修によって用途・階数・床面積などの判定が変わり、新たに消防用設備が必要となる場合もあります。必ず計画段階で所轄消防署や防災設備会社へ確認してください。当社(株式会社リライアークス)にご相談いただければ、計画段階からしっかりと伴走していきますのでご不安にならず、お気軽にご相談ください。
スプリンクラー設備が必要な建物とは
ここでは、スプリンクラー設備の設置対象となりやすい主な建物をご紹介いたします。
実際の設置義務は、消防法施行令第12条に基づき、用途・階数・床面積・構造などを組み合わせて判断しますのでご注意ください。
病院・福祉施設

病院や福祉施設には、入院患者や高齢者、障害のある方など、火災時に自力での避難が難しい方も多く、避難誘導に時間を要する可能性があります。
スプリンクラー設備は火災の拡大を抑え、救助や避難のための時間を稼ぐことができます。
特に、火災時に自力避難が困難な方が入所・入院する施設では、延べ面積にかかわらず設置対象となる区分があります。ただし、施設の種類や入所者・患者の状況、夜間体制、建物構造などにより対象や例外が異なります。
① 社会福祉施設(老人ホームや障害者施設など)
消防法施行令別表第1(6)項ロに該当する施設のうち、自力避難が困難な方を主として入所させる施設などは、原則として延べ面積にかかわらず設置対象です。
一方、施設区分や利用者の状況によっては275㎡以上が基準となる場合や、一定の構造要件による例外もあります。
② 病院・有床診療所
病院・有床診療所*・有床助産所のうち、火災時の避難が困難な患者が入院する施設として政令で定められた区分は、原則として延べ面積にかかわらず設置対象です。対象の判定では、診療科目、病床の種別、夜間の勤務体制、建物の構造などを確認します。
なお、スプリンクラー設備の対象は「発症後14日以内」といった一律の日数では判断せず、消防法令で定める施設区分や条件に基づいて確認します。
有床診療所とは? 医療法上、患者を入院させるための施設を備え、病床数が19床以下の診療所を指します。20床以上の施設は「病院」に区分されます。
③ 無床(むしょう)診療所
入院施設のない無床診療所は、入院患者を収容する医療施設としての面積無関係の基準には通常該当しません。
ただし、複合用途、階数、床面積、建物構造など、ほかの条件によって設置対象となる場合があります。
出典:e-Gov法令検索『医療法』第1条の5
出典:総務省消防庁『スプリンクラー設備の設置義務について(資料5-3)』
共同住宅・マンション

共同住宅やマンションでは、原則として11階以上の階がスプリンクラー設備の設置対象です。
ただし、共同住宅には省令・告示による特例があり、建物の構造や消防用設備の状況によって設置を要しない場合があります。
スプリンクラー設備は、火災の拡大を抑え、被害を軽減するとともに、居住者が避難するための時間を確保する役割があります。
共同住宅では、専有部で発生した火災に、ほかの住戸の居住者がすぐに気がつけないことがあります。廊下や階段、配管・ダクトの貫通部などを通じて煙や熱が広がると、避難経路が使いにくくなる恐れがあります。
そのため、スプリンクラー設備だけでなく、自動火災報知設備や避難経路の確保とあわせて防火対策を考えることが大切になります。また、管理会社や管理組合の方であれば、制御弁やポンプ室の点検スペースを確保し、改修工事や用途変更の後も設備の状況に問題がないか定期的に確認することも大切です。
避難設備について、いくつか当社でも記事を書いておりますので、ご興味あればこちらもご覧ください。


ホテル・旅館

ホテルや旅館には、不特定多数の方が宿泊します。
睡眠中に火災が発生すると発見が遅れやすく、逃げ遅れる危険性も高まります。
また、建物内の構造や避難経路に不慣れな方が多く滞在するため、混乱や避難の遅れが生じる可能性が十分にあります。そのため、火災の拡大を抑えるスプリンクラー設備が非常に重要な役割を担います。
ホテル・旅館は客室が多数に区画され、就寝中は客室の扉が閉まっていることも多いため、火災の発見や館内放送への反応が遅れる恐れがあるため、高齢者や子ども、外国人旅行者など、警報内容や避難案内をすぐに理解しにくい利用者への配慮も必要となります。
スプリンクラー設備による延焼抑制に加え、自動火災報知設備、非常放送設備、誘導灯、避難経路の維持管理、従業員の消防訓練を組み合わせ、夜間でも迅速に初動対応できる体制を整えることが重要です。
警報設備や誘導灯についても当社で記事を書いておりますので、ご興味があれば、こちらもご覧ください。


商業施設

商業施設とは、百貨店やショッピングモール・駅ビルなどの営利目的の店舗やテナントが集まった建物のことを指します。
これらの建物は構造が複雑で、不特定多数の人が滞在するため火災発生時にパニックが生じやすく、避難に時間がかかるリスクがあります。
また、多くの商品や可燃物が密集しているため、一度火災が発生すると急速に拡大する恐れがあります。
スプリンクラー設備が火災の初期段階で作動して延焼を抑えることで、避難や消防活動に必要な時間を確保しやすくなります。
倉庫

倉庫では、段ボールやプラスチック、梱包材などの可燃物が大量に保管されていることも多く、火災が発生すると大規模な火災へ発展する恐れがあります。
また、天井が高い倉庫では、火災の熱がスプリンクラーヘッドへ到達するまでに時間を要する場合があるため、初期消火に遅れが生じたり、高所に保管された物品によってスプリンクラーでの消火活動が難しくなることもあります。
倉庫は、用途、階数、床面積、保管方法などにより基準が異なります。代表例として、天井の高さが10mを超え、かつ延べ面積700㎡以上のラック式倉庫は、消防法施行令第12条の設置対象となります。
スプリンクラー設備を設置しないリスク
消防法により設置が義務づけられているにもかかわらず、スプリンクラー設備を設置していない場合、以下のようなリスクが生じるおそれがあります。
初期消火が遅れる
スプリンクラー設備は、火災の初期段階で自動的に散水し、火災の拡大を抑えて避難や消防活動のための時間を確保する役割があります。
火災は時間の経過とともに拡大し、煙や熱によって避難が難しくなります。
消防庁の消防白書でも、初期消火に消火器やスプリンクラー設備などが使用されている状況が示されています。設置義務のある設備がなければ、火災の拡大を早期に抑える機会を失い、人的・物的被害が大きくなるおそれがあります。

被害拡大のおそれ
初期消火ができないまま時間が経過すると、炎は天井や壁、可燃物へ広がり、隣室や上階、近隣の建物へ延焼する可能性があります。火災で発生する煙や一酸化炭素などの有害ガスは、炎より先に廊下や階段へ流れ込み、視界を奪って避難方向を分かりにくくします。
さらに、建物や設備の焼損、消火活動による水損、営業・居住の長期停止、復旧費用の増加など、人的被害にとどまらない影響も生じます。
スプリンクラー設備で火災の拡大を早期に抑えることは、避難時間の確保だけでなく、建物や事業の損失を軽減するうえでも重要です。

消防法違反になる可能性
消防法第17条第1項および消防法施行令第12条では、一定の防火対象物またはその部分に、スプリンクラー設備を設置・維持することが義務づけられています。
設置義務があるにもかかわらず必要な設備を設けていない場合は、消防法令違反となり、立入検査や是正指導、設置命令等の対象となる可能性があります。

行政指導や罰則の対象となる場合がある
スプリンクラー設備の設置基準は消防法で厳密に定められています。
消防署の立入検査などでスプリンクラー設備の未設置や基準への不適合が確認された場合は、行政指導が行われるほか、消防法第17条の4に基づき、設備の設置や修理などを命じられることがあります。
さらに、この命令に違反して必要な消防用設備等を設置しなかった場合は、消防法第41条第1項第5号により、1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金が科される可能性があります。

消防法
第四十一条 次のいずれかに該当する者は、一年以下の拘禁刑又は百万円以下の罰金に処する。
第十七条の四第一項又は第二項の規定による命令に違反して消防用設備又は特殊消防用設備を設置しなかつた者。
出典:e-Gov法令検索『消防法』第41条第5号
スプリンクラー設備は法で定められた点検が必要

スプリンクラー設備には、消防法第17条の3の3に基づく定期点検と、消防長または消防署長への点検結果の報告が義務づけられています。
消防法
第十七条三の三 第十七条第一項の防火対象物(政令で定めるものを除く。)の関係者は、当該防火対象物における消防用設備又は特殊消防用設備等(第八条の二の二第一項の防火対象物にあつては、消防用設備又は特殊消防用設備等の機能)について、総務省令で定めるところにより、定期に、当該防火対象物のうち政令で定めるものにあつては消防用設備士免状の交付を受けている者又は総務省令で定める資格を有する者に点検させ、その他のものにあつては自ら点検し、その結果を消防長又は消防署長に報告しなければならない。
出典:e-Gov法令検索『消防法』第17条の3の3
点検は半年に1回の「機器点検」と1年に1回の「総合点検」の2種類があり、さらに建物の用途に応じて年に1回または3年に1回の頻度で所轄の消防署へ報告しなければなりません。
ここでは、点検の種類と報告の頻度について詳しく解説します。
機器点検とは?
機器点検とは、設備や機器が安全かつ正常に機能するか、主に外観の目視や簡単な操作によって、損傷や異常の有無を確認する法定点検です。
スプリンクラー設備の機器点検では、目視や簡単な操作により、以下の機器に損傷・著しい腐食・変形・漏れなどの異常がないかを確認します。定期的に点検することで、事故や故障の防止につながります。
- 水源:規定量の水が確保されているか、水漏れや変形がないかを確認します。
- 加圧送水装置(消火ポンプ):ポンプ周辺に障害物がなく、異音や錆が発生していないかを確認します。
- 制御盤:電源が正常に供給されており、断線などの異常ランプが点灯していないかを確認します。
- バルブ類:配管の固定状況や水漏れがなく、バルブが規定の開閉位置にあるかを確認します。

総合点検とは?
総合点検とは、実際に消防設備を作動させ、設備全体が正常に機能するかを確認する法定点検です。
スプリンクラー設備の総合点検では、設備の全部または一部を実際に作動させ、加圧送水装置、流水検知装置、警報装置、配管、弁類などが総合的に機能するかを確認します。設備の方式や構成に応じて、末端試験弁等による試験や非常電源の確認を行います。
- 水源:規定量の水が確保されているか、水漏れや変形がないかを確認します。
- 加圧送水装置(消火ポンプ):ポンプ周辺に障害物がなく、異音や錆が発生していないかを確認します。
- 制御盤:電源が正常に供給されており、断線などの異常ランプが点灯していないかを確認します。
- バルブ類:配管の固定状況や水漏れがなく、バルブが規定の開閉位置にあるかを確認します。

点検報告の頻度
機器点検・総合点検の結果は、維持台帳等に記録し、消防法令で定められた期限ごとに所轄の消防長または消防署長へ報告します。
点検を行う周期と、点検結果を報告する周期は同じではありません。報告周期は、建物の実際の使われ方と、消防法施行令別表第1の用途区分に基づいて判断されます。基本的な区分は次のようになります。

特定防火対象物:1年に1回
劇場、飲食店、百貨店、ホテル・旅館、病院、社会福祉施設、地下街など、不特定多数の方が利用する施設や、火災時の避難に特に配慮を要する方が利用する施設が該当します。不特定の人が出入りするため、火災時の混乱や逃げ遅れのリスクが高いことから、毎年1回の報告が求められます。
非特定防火対象物:3年に1回
共同住宅(アパート・マンション)、事務所、学校、図書館、工場、倉庫など、主として利用者が特定される建物が該当します。報告は3年に1回ですが、機器点検は6か月に1回、総合点検は1年に1回という点検周期自体が延びるわけではないため注意が必要です。
複合用途の建物では、建物全体と各テナントの用途を確認する必要があります。テナントの入替えや用途変更によって区分や報告周期が変わる場合もあるため、不明なときは所轄消防署へご確認ください。
また、点検や報告を専門業者へ委託する場合でも、法律上の義務を負うのは建物の関係者です。
報告書の控え、次回期限、不具合の内容と改修状況を管理し、指摘を放置しない体制を整えることが大切です。
出典:総務省消防庁『消防用設備等点検報告制度について(参考資料4-6)』
出典:総務省消防庁『別表第3 スプリンクラー設備の点検の基準』
スプリンクラー設備に関するよくある質問
この章では、スプリンクラー設備の点検を依頼する際に、不動産会社やビル管理会社の担当者から寄せられることが多い実務上のよくある質問にお答えします。
この他にも色々なお悩みや質問があるかと思いますが、参考にしていただけると幸いです。
当社ではお客様の分からない部分も含め丁寧・親切に・わかりやすい言葉でご説明し対応していますので、スプリンクラー設備などの防災設備でお悩みの際は、まずはお気軽にご相談・お問い合わせください。
質問① 点検の見積もりを依頼する際は、どのような資料が必要ですか?
建物の用途・所在地・階数・延べ面積に加え、スプリンクラー設備の系統数や設置場所が分かる資料をご用意いただくと、見積もりや点検計画を立てやすくなります。
特に、消防設備の図面、直近の点検結果報告書、消防署から交付された指摘書、過去の改修履歴があると、現地調査の前に確認すべき箇所を絞り込めます。
資料が揃っていない場合でも、まずは建物の概要を伝え、現地調査が必要か点検会社へ相談するとよいでしょう。

質問② テナントが営業中、または入居者がいる状態でも点検できますか?
点検内容や建物の運用状況によっては、営業中・入居中でも実施できます。
ただし、スプリンクラーヘッドや末端試験弁、ポンプ室、制御弁室などへ立ち入る必要があるため、点検箇所の周辺を一時的に空けていただく場合があります。
また、警報音の鳴動、火災受信機との連動確認、消火ポンプの起動音などが発生する可能性があります。
テナントや入居者の混乱を防ぐため、実施日時・立入範囲・警報試験の時間帯を事前に点検会社と確認し、館内掲示や一斉連絡で周知しておくことが大切です。

質問③ 点検では実際に放水しますか?室内が濡れることはありませんか?
通常の点検では、居室や共用部のスプリンクラーヘッドを作動させて室内へ散水するわけではありません。
総合点検では、末端試験弁や試験装置などを使用して水を流し、配管内の圧力、流水検知装置、消火ポンプ、警報設備などが正常に連動するかを確認します。
ただし、設備の構成や試験方法によっては排水作業が発生し、断水・警報停止・設備の一時停止などの調整が必要となることがあります。
水漏れや排水先の問題を防ぐためにも、点検前に放水・排水の方法と、建物利用への影響を確認しておきましょう。

質問④ 点検で不具合が見つかった場合、その場で修理してもらえますか?
軽微な調整や、あらかじめ交換部品を用意している作業であれば、点検当日で対応できる場合があります。
一方、ポンプ・制御盤・流水検知装置・配管などの修理は、原因調査や部品の手配、断水を伴う工事の調整が必要となるため、別日に改修工事を行うことが一般的です。
点検を依頼する際は、不具合箇所の写真や内容を記載した報告書、改修の優先度、見積書、工事までのスケジュールも提示してもらえるかご確認ください。
防火上の機能に影響する不具合は放置せず、建物管理者と点検会社で応急対応や改修時期を速やかに協議することが重要となります。

質問⑤ 消防署への点検結果の報告まで依頼できますか?
点検会社によっては、点検結果報告書の作成から所轄消防署への提出まで一括して依頼することが可能です。
提出代行の可否、委任状の要否、提出費用が点検料金に含まれているかは、契約前に確認しておくことをおすすめします。
なお、消防用設備等の点検と結果報告は、防火対象物の関係者に課せられた義務となります。
提出を点検会社へ依頼する場合でも、報告期限、提出先、指摘事項への対応状況を不動産会社やビル管理会社側でも把握し、報告書の控えを必ず保管しておくことが大切です。

スプリンクラー設備の設置や点検は【株式会社リライアークス】まで
スプリンクラー設備の設置や点検は、専門知識と資格を持つ防災設備会社へ依頼することをおすすめします。
防災設備会社であれば、スプリンクラー設備の設計・施工から、設置後の点検や消防署への報告まで、一貫して相談できます。
消防設備士や消防設備点検資格者などの有資格者が在籍する会社へ依頼することで、法令に沿った適切な設置や点検、報告を行いやすくなります。
私たち【株式会社リライアークス】は、横浜市を拠点に、マンション・ビル・店舗などを中心として、消防用設備の設計・施工・法定点検をワンストップで行う防災設備会社です。

当社には、消防設備士や消防設備点検資格者などの資格を持つ経験豊富なスタッフが在籍しており、建物の用途や構造、設置基準を確認したうえで、設計・施工から定期点検、不具合箇所の改修、消防署への報告に関するご相談まで一貫してサポートしております。
点検で判明した不備の改修、新規店舗やテナント改装に伴う移設・増設、施工後のアフターフォロー、緊急時のご相談にも、自社・協力業者と連携しながら対応しております。施工後の使い方や維持管理も見据え、火災時に設備が確実に作動できる状態を保てるよう支援いたします。
私たちは、「スピード感」・「対応力」・「柔軟性」の3つを大切にし、お客様の状況や建物ごとの条件に合わせた防災サービスを提供しています。
横浜市を拠点に、東京・神奈川・千葉・埼玉の首都圏エリアで、防災設備の設計・施工・点検・改修など、幅広い防災関連業務に対応しております。
「どの種類のスプリンクラー設備を設置すればよいかわからない」
「設置基準について詳しく知りたい」
「所有する建物にスプリンクラー設備が必要か確認したい」
といったお悩みがございましたら、株式会社リライアークスまでお気軽にご相談ください。


まとめ
スプリンクラー設備は、火災による熱や感知器からの信号などによって作動し、散水によって初期消火や延焼の抑制を行う消防用設備です。
火災の拡大を早期に抑え、建物内にいる人が避難するための時間を確保する役割があります。
消防法第17条では、建物の用途や規模などに応じて消防用設備等を設置・維持することが義務づけられており、スプリンクラー設備の具体的な設置対象や基準は、消防法施行令第12条に定められています。設置義務の有無は、建物の「用途」「階数」「延べ面積」「構造」などをもとに判断されます。
特に、建物の11階以上の階や、自力での避難が困難な方を主として収容する一定の病院・福祉施設などは、床面積にかかわらず設置対象となる場合があります。
ただし、建物の構造や施設区分などによる例外もあるため、個別の確認が必要となります。
スプリンクラー設備は、主に次の3種類に分けられます。
- 閉鎖型スプリンクラー設備(湿式・乾式・予作動式)
- 開放型スプリンクラー設備
- 放水型スプリンクラー設備

種類によって作動方法や適した設置場所が異なるため、建物の用途や環境に合わせて適切な設備を選定することが重要です。
総務省消防庁の資料では、スプリンクラーが法令に基づいて設置された建物は、死者の発生率が約6分の1程度に抑えられているとされています。設備を設置するだけでなく、火災時に正常に作動する状態を維持することも欠かせません。
消防法第17条の3の3に基づき、消防用設備等には定期的な点検と結果報告が必要です。
スプリンクラー設備では、外観や簡易な操作によって損傷・漏れ・弁の状態などを確認する機器点検を6か月に1回、設備の全部または一部を作動させ、ポンプや警報設備などの機能を確認する総合点検を1年に1回実施します。
点検結果は、特定防火対象物では1年に1回、それ以外の防火対象物では原則として3年に1回、所轄の消防署へ報告します。
不具合が見つかった場合は報告だけで終わらせず、防火上の影響や緊急性を確認し、早めに改修することが大切です。
スプリンクラー設備の設置・点検についてお悩みやお困りごとがございましたら、株式会社リライアークスまでお気軽にご相談ください。

_compressed-1024x773.webp)